11日間だけの手紙｜小吹梨絵

写真には人生をまるごと変えてしまう可能性がある。

あなただけの一枚を見つけに、私たちと旅に出かけませんか。

One’s scene｜ワンズシーン

車で暮らす友人のはなし

友人のひとりが「車で暮らしはじめた」というので見にいくと、そこにはアトリエのような空間がありました。その人がいうには、選りすぐりのモノだけと暮らすようになって身軽になった。この部屋があれば、鉄道が通らない広大な土地を巡ることができるんだと。そんな話を聞いて、私の頭には『ひとつの計画』がぼんやりと浮かんできました。

前例のない大計画

30歳を迎えたころから、私は自分のスタジオを持とうと考えるようになりました。しかし、大阪で生まれ、東京、カナダ、神戸と、さまざまな街で暮らした経験もあり、どこかひとつに決めることに悩んでもいました。車輪をつけて空間ごと移動させてしまうという発想は、まさに私が求めていたものだったのです。

私は頼みこんで車を借り、実際にひと月、暮らしてみることにしました。心のままに車を走らせ、誰もいない早朝に海を訪れたり、雲海が現れるまで山で本を読みました。心奪われる風景にシャッターを切り、出逢った人にポートレイトを贈りました。そうするうちに、私の撮影家としての『理想の姿』が見えてきました。

これから私がやろうとする計画は、前例がありません。大きな覚悟がいることだし予算もかかります。他人がみていいと思うのか、独りよがりなのではないかと思うこともあります。そこで今回、みなさまの声を聞かせていただきたくて、クラウドファンディングを行うことにしました。今から大計画の全容をお見せしますので、共感してくださるならその量だけ応援してください。

この日のためにホームページを作り、古物商などの営業許可書も取りました。協力してくれる仲間たちと数千キロの大移動をして写真も撮りました。間違いなく31年間の人生の集大成です。どうか私の想いを受け止めてください。

2024.09.20/ 小吹梨絵

部屋に車輪がつくことで

この計画では、まずアトリエを造ることから始めます。一台の車に魔法をかけて、《ハウルの動く城》みたいな動く部屋に変身させます。ここには撮影の道具をはじめ、衣装や化粧道具、バリスタ監修15種類のスペシャリティ・コーヒーまで、撮影に必要なすべてを備えます。

私はこのアトリエを動かし、ひとりひとりに合わせたとっておきの舞台へお連れします。観光地でもリゾートでもないあなただけの場所を選びますので、湖で無数のランタンを飛ばしたり、森のなかにシェフを呼んだりと、常識に縛られない自由で大胆な撮影ができるようになります。

撮影というのは、慣れている方でもけっこう疲れます。だからこそご自宅までの送迎はもちろんのこと、撮影の合間いつでもおやすみいただけるようにアトリエを整えておきます。ファーストクラスのように、お茶菓子やシャンパン、心安らぐアロマまで取り揃えていますので、丸一日の撮影を終えたのにむしろ元気になっているという状態を叶えます。

とびっきりを少しだけ

先にお話ししたように、私はわずか6㎡の空間でひと月暮らしたことで、モノや情報を減らすほど、ひとつに対する愛着が深まることを身をもって学びました。私はこれまで、一度の撮影に100枚〜200枚の写真を納品していましたし、同業者には300枚や500枚を送るのが常識という方もいます。しかし本心は、枚数を稼ぐのに苦労しています。

私は《タイタニック》のように、何年経っても色褪せない作品をこそ贈りたいので、撮影後にお渡しする枚数はベスト・アルバムの楽曲数まで絞ることに決めました。厳選する分だけ徹底的にこだわることをお約束します。

写真の手直しは言うまでもなく、作品ひとつひとつに題名（タイトル）をつけ、描きだす素材や現像方法、梱包のリボンひとつにまでこだわり抜いてお渡しします。表現したい世界観によっては、暗室を使って自ら現像も行います。いつだって記憶に残るのは、とびっきりを少しだけです。

シェフが仕上げのソースをかけるように

私がお客様からお金をいただくのは、写真を撮ることに対してではありません。撮影家がシャッターを押すのは、シェフが仕上げのソースをかけるようなもので、それまでに肝心な仕事は終わっているからです。そもそも撮るだけなら、それなりのカメラがあれば誰にでもできます。

制作会社にいたころの私は、自分が何に対してお金をいただいているのか解っていませんでした。業界の常識によって、やることも相場も決まっていたからです。ポートレイトなら3万円、フォト・ウェディングなら20万円。衣装を選んで所定の場所で撮って、編集したデータを納品することが仕事でした。形式上の打ち合わせはしますが、ほとんどは型通りです。

私が動くアトリエで撮影の計画を立てるとき、常識というものは一旦すみっこに追いやります。やりたいことをテーブルに全て並べて、そのカードでお客様が涙を流して感激する姿を想像できたなら、はじめて現実的なこと（スケジュールや撮影地、予算など）を考えます。だから私が提案する撮影は、完全なオリジナルで世界にひとつしかありません。

白いうさぎに連れられて

このように業界の常識に囚われず、映画のワンシーンのような一枚をお届けするために、10月から『動くアトリエ』の制作をはじめます。制作期間は2ヶ月で予算は200万円です。正直に申し上げると、フリーの撮影家である私が数ヶ月も仕事の手を止め、さらに大きな金額を負担するのは震えるほど怖いことです。私は独りでもやり切る覚悟がありますが、切実にあなたに応援してもらうことを求めています。どうかクラウドファンディングを通して、私の背中を押してもらえませんか。

ここから、完成したアトリエを使ってお連れする撮影プランを4つご紹介します。本来であれば、おひとりおひとりに合わせた完全オーダーメイドの旅を提案しますが、今回は具体例をお見せするために、実際に私がやったことのある会を模してプランを練りました。いずれも大掛かりなことをしていますので、金額は安くありません。しかし、白うさぎに連れられてアリスが穴に飛び込んだように、私について来てくれるなら不思議の国へお連れします。

動くアトリエでお連れする『撮影の旅』
壱の旅｜白樺の森のダイニング
弍の旅｜音と光とクリスマス
参の旅｜あなたにかける魔法
肆の旅｜青い鳥をさがして
最後に｜クラウド・ファンディングのお願い

壱の旅｜白樺の森のダイニング

守らなければならない女性がいる男性へ。想いを確かめ合う《アバウト・タイム》のようなデートを贈りませんか。

あなたが最後に愛の言葉を伝えたのはいつでしょうか。

男性からみれば、女性はわがままな生き物なのかもしれません。優しいあなたが仕事に打ち込み、プレゼントを贈り、献身的に彼女を支えていたとしても、そこに言葉が添えられていなければ、決して安心することはないからです。デザートのないコース料理に心が満たされることがないように。

もしかすると、そんな態度に腹を立てることがあるかもしれない。嫌いなところばかりが目につくかもしれない。けれども、その女性はたったひとりあなたの心を動かした人です。もう一度だけあなたの方から歩み寄り、言葉を届けていただけませんか。私たちが出来うる最高の準備を整えます。お互いが惚れなおす大人の正装。心に刻まれる花束。誰にも邪魔されない空間でのロマンティック・ディナー。そして、変わることのない愛をフィルムにとじ込めます。

『白樺の森のダイニング』の詳細

弍の旅｜音と光とクリスマス

友人を喜ばせることが好きなあなたへ。《ラブ・アクチュアリー》のようなクリスマス・パーティーを主催しませんか。私が車でさまざまな場所へ移動し、培ってきた人脈をすべて使って最高の瞬間を演出します。

クリスマスが近づいた週末に大きな洋館を貸し切り、幻想的な光と音をつかって、まるで夢のなかにいるような時間を演出します。香り高い紅茶やホット・ワインを飲みながら、友人との再会をお楽しみください。お互いが話しやすい空間作りの工夫を細部に凝らしておきます。

イタリアンの隠れた名店のシェフを呼んでいますので、クリスマス・ディナーはお任せください。宝石のようなピンチョス、クリスマス色のカプレーゼ、みんなの食欲を鷲掴みにする七面鳥。お腹と心が満たされたなら名物のカヌレで甘い余韻に浸るのはいかがでしょうか。

スマートフォンで写真を撮ることなんて忘れて、ただその場を楽しんでください。私がみなの笑顔を空気ごとフィルムに閉じこめ、クリスマスの夜にトナカイに届けさせます。